BajaProg2004

2004-03-14

BajaProg2004 雑感3

そしてこれから...

昨年のArs Nova、今年のKBBと二年連続してぼくがブッキングして連れてきたバンドが大好評だったので、主催者のアルフィンソにはとても気に入られたようだ。今や世界最高の内容を持つフェスティバルに成長したここに、多分毎年日本からバンドを出場させることになるだろう。既に来年のことについてもミーティングして、ほぼ話をまとめてきた。

一方、KBBの次なるターゲットは東海岸のNEARfestだ。2作目のCD「Four Curner's Sky」完成時にNEARfestに送ったところ、いたく気にいってもらえたのだが、あいにく2004年大会は全ての出場バンドが決まった後だった。このため、KBBはNEARfest2004キャンセル待ちバンドリストの一番上に現在でもいるし、2005年出場のプライオフィティーが最も高いバンドだ。

ちなみに、2003年の記録はここにあります。2004年記録も近日中にアップ予定。http://www.musicterm.jp/poseidon/bajaprog/

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2004-03-13

BajaProg2004 雑感2

ラテンアメリカプログレ分析

Bajaで4日間もラテンアメリカのプログレを大量に聴かされていると、傾向と対策が見えてくる。出場していたのは、チリ、ヴェネズエラ、メキシコ、ブラジルから合計6バンド。さらにスペイン語の本拠地スペインからも2バンド招かれていた。大国アルゼンチンからの出場はない。経済危機によるものだろうか。

音楽的な特徴はどのようなものか? まとめると、こけおどし的な派手な展開、無意味に長い曲、頻繁かつ強引な転調、ヴァイオリンやフルートなどの飛び道具の多用、レベルの高いヴォーカリスト(インストは少ない)、などによるヘヴィーシンフォである。ライブで観客の反応を見ていると、これらのポイントは、「熱しやすく冷めやすいラテン人気質」というユーザーニーズを汲み取ったものだということがよく分かる。とりあえず一曲名は口笛と歓声で過剰に反応する。が、しかし飽きてくるとさっさと見切りをつけて席を立ってしまう。飽きられないためには、バンド側には派手であること、目先をころころと変ること、が必要になる。こうした方向性の音楽で完成の域に達しているのは、イタリアのバンコやオザンナである。一方現役のバンドの多くはそこまでの技は持ち合わせていないので、単なるど派手な音楽や展開方法がワンパターンでつまらない音楽に聴こえてしまうことが多い。そうした中で今回出場したチリのMATRAZは、まだ未完成ながらソリッドなアンサンブルとパワフルな女性ヴォーカリストのマッチングが良く、ぜひまた見たいバンドだ。

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2004-03-12

BajaProg2004 雑感1

世代交代

BajaProg2004にはスウェーデンのAnekdotenとイタリアのDeus ex Machinaが出演していた。奇しくもこの2バンドはProgFest'95で世界デビューを果たしている。また、日本のArs NovaもProgFest'95で世界デビューした「95年組」に数えられる。この3バンドにスウェーデンのFlower KingsやPar Lindhを加えた5バンドが各地のフェスティバルで引っ張りだこになった、過去10年の売れっ子バンドである。アメリカ勢のSpock's Beard, Echolyn, Mastermindなどは、95年時点ではほぼ同クラスにあり、ヨーロッパにもツアーしていたが、その後は元気がない。

さて、Bajaで見たAnekdotenとDesu ex Machinaはどうだったかというと、両者ともにプログレシーンでの中堅バンドとしてそれぞれの存在感持つまでに成長していた。独自の世界観を貫いているAnekdotenはディティールが繊細になり、相変わらすユニークでプログレファン受けする音楽を奏でる。DxMは、初期の強力なヴォーカリストを活かしたパワフルな音楽から、より複雑な曲構成となりテクニカルでジャージーな方向へと進化した。しかし、両者ともにデビュー当時のインパクトは既になく、今後の10年間の担い手とは考えづらい。このことは、他の3バンドにも同様に当てはまる。

一方、1995年当時に活動が活発化したこの5バンドと同程度のクオリティーを持ち後に続く者は、結局のところ現在に至るまで現れていない。これは、ファンにも業界にもフラストレーテッドなことであり、無意識のうちにも有望な新人を切望する機運がある。フェスティバルで初見の新人バンドのパフォーマンスに感激する、といったことは滅多になくなっている。KBBの演奏がBajaProgで、Arti e Mestieriよりも、Anekdotenよりも、Soft Worksよりも、DxMよりも人気があったのは、実力もさることながらこうした気分によるところが大きい。ではKBBが今後10年間をリードするのか、というとそれはBaja一回ではまだわからない。しかし、大きなポイントと考えられるのはKBBが依然として急激な成長期にある、ということだ。KBBの1作目から2作目のCDへの変化を聴けば、このことに異論はないだろう。海外でもKBBは2作目で著しく進歩した、と見られている。これに対して、上記の5バンドは、世界デビュー時には成長期を終えようとしており、その後の10年は成熟期だった。Baja出場時の評価で、KBBは世界のトップランカー入りした。ポテンシャルは認められたが、その地位に留まれるかどうかは今後のクリエイティビリティーにかかっている。

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2004-03-11

BajaProg2004 4日目

ホテルと会場内では、みんなが「ライブ、良かったよ!」とか「グレイト!」とか声をかけてすれ違っていく。日本ではこんなことは経験したことがないので、メンバーは戸惑う。出演ミュージシャンも、「とっても良かったよ」と声をかけてくる。Hugh Hopper, Richard Sinclair, Arti e Mestieri, Anekdoten, Deus ex Machina, その他ほとんど全ての出演者が寄ってきて称賛していく。来なかったのそうした場で姿を見かけなかったIQくらいか。野外のホテル会場や、合計2回のパーティーは、こうしたミュージシャン同士の交流の場としてとてもいい。

ホテルは関係者とファンが同宿するプログレホテル状態になっていて、ファンからのサイン責めにあったり、各地のフェスティバルへの出演依頼、他の有力バンドとのツアーへのお誘い、雑誌のインタビュー、CDやDVDのライセンス依頼などのビジネスがあちこちで進行している。各国から集まった関係者には、交流やビジネスの滅多にないチャンスなのだ。中でも初の海外公演となるKBBに対するアプローチはとても多かった。

ホテルのライブ会場でも急遽CD販売&サイン会をやることになる。サインをもらって一言KBBと話そうというファンが列をつくる。他のバンドよりもKBBには女性ファンが多いようだ。ヴァイオリンの調べにうっとりなのか。あまりの好反応に気をよくしたバンドは、次のツアーの検討を始める。現金な奴らだ。というわけで、ホテル会場のライブはほとんど見てません。

シアター会場の本日のハイライトはArti e Mestieri。凄まじい衝撃力に浮かれた気分が一瞬で吹っ飛ぶ。キリコ凄い。世界の壁は厚い。DMメールを出した後でAritを見て良かった。

夜中過ぎにホテルを発ってサンディエゴに向かうので、ファイナルパーティー(要するに打ち上げ)はパスする予定だった。でも、YOU MUST GOと主催者のアルフォンソに言われて顔を出す。フェスティバルのヒーローが欠席するわけにはいかない雰囲気なのだ。会場内で、「どのバンドのライブが今回のベストか」ということが話題になりKBBを挙げた人が多かった。次いで多かったのが、KBBとAritの同率一位であり、この2つが話題のほとんどを占めていた。KBBのことは曲はおろかどんなバンドかすら知らなかった人が多数いて初めて見るインパクトが強かったこと、さらにとても若く見られていて若手のホープだと思われいること、などが評価にゲタを穿かせているとは思う。とはいってもトップはトップだ。素直に喜ぼう。

ホテルに帰って、バタバタ準備してサンディエゴ行きの車に乗り、帰国の途につく。アメリカ再入国でのトラブルが心配されたが、何事もなく無事に帰国。KBBの次の予定は6/13の凱旋ライブ。

ちなみにここでもメンバーが日記を書いています。

http://d.hatena.ne.jp/tsuboy/

http://members.jcom.home.ne.jp/d-sound/index.html

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2004-03-10

BajaProg2004 3日目

スタートは静かだった。Tsuboyのヴァイオリンソロが始まっても、まだ海外では知名度が低いKBBを知る観客は少なく、みんな腕組みをして聴いていた。おしゃべりしている連中すらいる。しかし、残りのメンバーが登場してファーストアルバム収録の名曲「Catastrophe」に移ると、明かに会場の空気が変わった。名も知らぬバンドが、ダイナミックな曲を柔軟心得た演奏力で表現していくのに驚き、目を見張り、惹きつけられていくのが鮮明にわかった。

[そして興奮はピークに]

1曲終わる毎にとんでもなく大きなリアクションで、拍手と口笛と歓声が返ってくる。海外の観客ば、知名度ではなく曲や演奏の善し悪しに対する反応が本当に素直で、いい演奏をすると拍手喝采だが、しょぼいとブーイングがすぐ飛んでくる。KBBのレパートリーはシンフォニックな曲、ジャジーな曲、ケルト調の曲など多彩で、飽きさせず、そんな観客を虜にしていく。一つの頂点に達したのは、美しく奏でられる「白虹」が終わった瞬間で、観客数5000人ではないかと見まがうような大きな反響だった。

[世界が認めた日]

本編を短めに演奏してアンコールを受ける。ここまでの予定だった。しかし、興奮した観客が終わらせないのだ。手拍子と「Kee! Bee! Bee!」の声が次第に大きくなり、足踏みも加わって、ホールが壊れちゃうんじゃないかと思うほどの震動だった。フェスティバルのしかもオープニング出演なので、そんなにアンコールに応えているとスケジュールが押してしまうはずだが、演奏しないと暴動が起きそうだ。もう一曲だけ、とアナウンスして短めの曲を演奏しやっと開放される。KBBのみならず新世代の日本のプログレが、世界に認知された記念すべき瞬間だった。その後は、会場の至る所でメンバーが声をかけられ、ほんのちょっとスターになったみたいだった。KBBっていい名前だと初めて思った。アンコールで呼びやすいのだ。

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2004-03-09

BajaProg2004 2日目

今年から朝食ビュッフェのフルーツに挑戦。なにしろアブナイ生水を吸っているに違いないからちょっと怖い。生果実を食べるだけで冒険なんだから、海外遠征はなかなか楽しい。朝食後にインタビューを受ける。相手は米Expose誌の名物編集長ピーター。巨体を揺すらし、「ああ、シローは魔方陣にいたの。バビロニアは持ってるよ。」とドラマー菅野詩郎が70年代に参加したレアなCDの話題をこともなげに持ち出すので、メンバーが驚く。今回、最も興味があるのはArti e MestieriとKBBだそうだ。ピーターとはもう10年来のつきあいになるが、多少の誇張はあっても嘘は言わない人だ。KBBのセカンドCDは次号でクロスレビューされるそうな。

今日から、ホテルのライブも見る。ホテル会場は昨年までの地下のバーからテニスコートの特設会場に移り、音響も良くなっている。会場は最前列でビデオをまわす熱心なファンから、日光浴をしているカップルまでさまざま。そう、日光浴できるほどメキシコの昼は暖かいのだ。だた夜は上着必須な程度には冷える。ホテル会場のライブは、新人育成が目的なので、内容はのどかなものでした。見ていたKBBはその場でラジオのインタビューを申し込まれて5分間答える。BajaProgのスポンサーにもなっているラジオ局で、こちらに来てから車のラジオでBajaProgのアナウンスをよく流している局だった。ラジオ放送はスペイン語なので内容はわからないのだけど、BajaProgという単語だけは耳に残っている。

夜になってシアター会場に移動する。シアター会場のライブは、まだウオーミングアップ段階で、徐々にお客が増えてきている。地元の英雄CAST、派手な展開のブラジルのバンド、本日のハイライトであるアネクドテンという構成。KBBはラテン流の観客のリアクションに驚く。とりあえずリアクションは派手。口笛と歓声は大きい。特に一曲目は。だからといって大ウケかというとそうでもなくて、つまらないとどんどんお客が減っていく。お客側の視点は、自分がどう楽しむかなので、バンド側もド派手な展開を次々に繰り出してお客を飽きさせないように努力している。が、しかし、たいていの場合はそんなにバラエティーに富んだ技は持っていないのがつらいところ。南米のバンド中心の会期前半はだいたい去年と同じなのでここまでは予想通り。いよいよ明日は本番です。

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2004-03-08

BajaProg2004 1日目

たらふくビュッフェの朝食を食べる。昼と夜はちゃんと食べている時間と場所がないのだ。まだ時差ぼけで眠い。ホテル会場の午後の部のライブはパスしてメインのテアトル会場で楽器チェックとCD売り場の設営をやる。本日のライブは、チリのバンドがよかった。だいたいにおいて演奏技術水準は高い。7時スタートのはずが30分押して始まり夜中過ぎに終了するタイムスケジュールは例によってなかなかおおらか。75分の持ち時間は目安ににすぎない。なあんだ、そんなに長く演奏していいんだ、とわかった壷井彰久は曲構成に悩み始める。

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