Prog'Sud2006

2006-06-11

Prog'Sud2006 Report

アストゥーリアスが最終日に出演するということもあり25日夜に現地入りしたので、見ることができたのは後半二日間。

*5月26日

Paul Whitehead (USA)

ジェネシス、VdGGのジャケット画で有名なイラストレーターは、アメリカ在住で現在はミュージシャンもやっている。2年くらい前から各地のフェスに姿を現し、自分のバンド、作品のポスターなどを売り込んでいる。 音楽のほうは4人編成による、おどろおどろしいサイバーミュージックで、プログレとは言い難い。

Eclat (France)

イベントの主催者Eclatを見るのはBajaProg2005に続いて2回目。いまのところの最終スタジオアルバム『Le cri de la Terre』からは4年経っているので、音楽もメンバーもだいぶ変化している。Eclatは、初期のロック・テアトル(ANGEみたいなやつね)風のものから、序々にソリッドなものに変化してきており、ジャズロックの要素も持っている。現在は、浮かんでは消えるキャッチーなメロディーの狭間で変拍子を交えてゴリゴリとソリッドなサウンドが唸りを上げる、というスタイルだ。Bajaではまだ演奏していたロック・テアトル風の曲はもう演らずに、アルバム未録音の新曲が増えていた。ギターとヴォーカルを担当するAlain Chiarazzo以外には結成時のメンバーはおらず、また『Le cri de la Terre』時点からもリズムセクションが替わっていて、現在のドラマーはイタリアのOdessaの人。地元だけあってファンが多く、とても受けていた。アンコールあり。

Lazuli (France)

これもロック・テアトル風なところは微塵もないソリッドなバンド。Taalといい、フランスでは流行なのかも。スティック奏者が二人とマリンバ/ビブラフォン奏者を含む編成で、推定年齢30歳くらいと若い。サウンドは90年代クリムゾン風にばしばし決まる変拍子がとても気持ちいい。CDは自主で1枚。自作はMuseaからだそうで、BajaでMuseaの社長が推薦作としてCDをプレゼントしてくれたように力を入れているようだ。若手のホープといったところか。アンコールあり。

*5月27日

Asturias (Japan)

アストゥーリアスは、スケジュールの都合で最終日のトップに登場。やや緊張気味に始まるも、スタートすれば手練れの人たちなので、すぐにペースに乗る。反応はメキシコと似ていて、お客は最初はアコースティックにちょっと戸惑い、でも優美なメロディーが心の中に序々に浸透していくようだった。終わってみれば大歓声。大山さんのフランス語棒読みMCも受けてた。このあたりの配慮は結構重要なんだよね。南仏はパリあたりに比べて英語を話す人が少ないし。当然アンコール。「邂逅」の評判がよく、CD売り場ではこの曲が入っているCDを探しているお客が多かった。

Baraka (Japan)

日本のギタートリオ。ギタリスト高見一生は、ばんどびびるやFlogflavorにも参加していてひっぱりだこの人だ。いわゆるプログレ的な要素は少ないんだけど、とってもロックな人たちでノリがよく、またステージパフォーマンスもカッコいいので、人気があった。日本では年間に何十本もライブをこなしていて、シルエレにも出演することがあるので興味を持った人はライブをみてください。彼らのマネジメントがフランス関係に強い縁で出演したそうだ。10月のEclat来日はBarakaと共同でサポートすることになっている。アンコールあり。

RPWL (Germany)

ドイツのフロイド風新世代バンド。演奏、構成、雰囲気などなかなかいいし、ライブ慣れしていて受けもいいがが個性には欠ける。ジェネシス風が多いネオ・プログレのフロイド版といったところか。Porcupine Treeともちょっと雰囲気がかぶる。各地のフェスティバル出演者によく見かけるので活発に活動しているのだろうが、日本では人気が出ないタイプだ。フロイド曲も含めてアンコール2回。もちろんフロイド曲が一番受ける。

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2006-06-10

Prog'Sud2006開催概要

4日間開催され12バンドが出演した。

Wednesday 24 May
John Slade Band (France)
Lord of Mushrooms (France)
Tai-Phan (France)

Thursday 25 May
Il Castello di Atlante (Italy)
Mangala Vallis (Italy)
Soft Machine Legacy (England)

Friday 26 May
Paul Whitehead (USA)
Eclat (France)
Lazuli (France)

Saturday 27 May
Asturias (Japan)
Baraka (Japan)
RPWL (Germany)

地元フランスから4バンド、他はイタリア、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本の5カ国から遠征してきているが、日本からのバンドは初出場にもかかわらず一気に2バンドも出演したのはトピックだろう。イタリアからも2バンド。南仏からは イタリアは地域的に近いので、交流が多いのだろう。Mangala Vallisは元PFMのヴォーカリスであるベルナルド・ランゼッティを擁して活発に活動している。 Il Castello di Atlanteは、10月のポセイドンフェスにも来日する。Tai-PhanはKhanがまだ在籍して9人編成だそう。Paul Whiteheadは、初期ジェネシスのジャケット画家率いるサイバーミュージック。Lazuliは、Bajaで見損ねたばかり(彼らの本番がinterpose+のサウンドチェックと重なった)。ぼくらは25日深夜の到着だったので、後半二日を見ることができた。

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Prog'Sudとは

2006年にアストゥーリアスが出演したフランスのProg'Sudは、マルセイユ近郊のライブハウスで毎年春に開催されているヨーロッパ有数のプログレフェスティバルだ。

出演しているバンドの傾向は、ヨーロッパのフェスには珍しく、シンフォ、ジャズロック、シリアス系、などバランスよく配している。ヨーロッパでは、ネオ・プログレやメタル・プログレの勢力が強く、フェスティバルに出演する顔ぶれも日本で人気のあるプログレバンドとはだいぶ傾向が異なることが多い。地元フランスのバンド比率も高く、例年フランチャイズのEclatも含めて半数弱はフランス勢が占めている。

2000年に第一回目以来、毎年開催されている。当初は2日間7バンドだったものが、2006年は4日間12バンドにまで拡大した。出演しているなかで、大物クラスはSoft Machine Legency, Caravan, Balletto di Bronzo, Tai-Phan, Mirageなど。彩りを添えているのが、Mats/Morgan, Iconoclasta, Madrigal, Fragil  など。歴史を辿って行くと、その年に他のフェスティバルにも出演して活発に活動していたバンドが出演しているのが懐かしい。After Crying, Cast, DFA, Ricocher, Odessa, Trespass, Minimal Vital, Flamborough Head,Ken's Novel, Lord of Mushrooms, Mangala Vallisなどがこれにあたる。

主催者のAlain Chiarazzoは、プログレバンドEclatのリーダーでもあり、Eclatも毎年ホームグラウンドとして出演している。Eclatは各国のバンドに、このProg'Sudへの出演と引き換えに地元のフェスティバルへの出演を斡旋してもらっているようで、近年海外フェスへの出演数が激増している。ほかならぬポセイドンでもバーターで、10月のフェスに出演してもらうことになっている。

特徴は、お客が明るくて開放的だということだろう。いい演奏に対してはとことん賞賛して、拍手も盛大だ。アストゥーリアスも大好評だった。南仏はパリなどに比べるとおおらかでノリがいい。反面、リッチな人は少ないようで、大好評でも物販はあまり売れない。客層はプログレファンよりも地元の人たちが多そうだった。イタリアやパリから見に来ていた人もいたが、それは少数派。地元でのプロモーションに成功しているようだ。

日本のバンドは人気がある。フランスはプログレ弱小国で他国のプログレの人気があるのと、フランス人はそもそも日本びいきだからだ。だから今回は、とんとん拍子に話が決まって、日本から2バンドが遠征することになったのだと思う。

ヨーロッパに多くあるケースだが、会場は郊外で車がなければアクセスできない。マルセイユから飛ばして1時間弱だろうか。500人収容のPAが完備されたホールを使っていた。騒音の心配はないようで、サウンドチェック時には会場の扉を大きく開いていた。バンドは15年、フェスは7年続けているAlainは堅実に経営しているようで、バンドの海外公演やフェスに自治体や芸術団体からの援助を受けている。アストゥーリアスへのギャラもその資金でまかなわれたそうだ。

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